祖慶剛師の楽理

tenten34

2010年09月29日 13:58

2,師の指摘した事とは
 世礼工工四の節入れの誤り、吟法上の表現の不適切さの指摘であるが、それは野村流古典音楽保存会創立40周年記念誌や琉球箏曲保存会創立30周年記念誌で発表した論文と同一内容なのになぜかあの頃は話題にも上らなかったのか不思議である。願わくばあの頃師がお元気で対等に議論を交わせた時期に論争して欲しかった。
 世礼工工四については「微細な点までよく採譜されていて、稽古する者にとっては実に重宝なもので多大な便益を受け、野村流の普及発展に貢献した」と師も認めておられる。しかし、節入れの誤りと思われるものや符号表記が不適切であると思われるところについては、研究し訂正すべきは見直す必要があり、楽理を再考し、より良い野村流の教本を後世に残すべきであるというのがの師の半生をかけた願いなのです。

3、「散山節」について

師の指摘する「譜1,2,3は散山節の二行目の二拍と三泊の間、四行目の八拍と九拍の間、七行目の二拍と三泊の間の節入れ中…四が絃四の弾絃時から次第下げするのは伝統的野村流ではない。1/4拍ずらして歌わなければならない」という説に対しては同感であり、以下は私自身の研究から得た結論である。
 工工四は1行12の区画で出来ていて、奇数の段を清音部(表拍子・強)、偶数段を濁音部(裏拍子・弱)といい、それぞれの中央の音を清音、濁音という。清音は旋律の骨組みを構成し、濁音部は色々な技巧、装飾音を施し楽曲を整える。特に古典音楽では、清音へ向かっての上行下行はあっても清音(表拍子)での節入れ・節変わり、仮名付け等は節殺しということで当流では受け入られない唱法であり、工工四を分析してみても、散山節のような歌い方は他に例外を見いだす事は出来ない。従って、工工四の印刷校正ミスと認めることができれば、祖慶師の説の通り工工四の訂正があってもいいと思う。


4,「ごえん節」について

 師の指摘する「ごえん節三行(ウトゥジャ、下句同)譜4に図式してあるが、その5つの歌唱を比較して見ると★★印間の表現はそれぞれ多少異なってはいるが、歌ってみればどれも一拍以上のネーヰになっている。しかし、世礼工工四では、尺上間は1/4拍のネーヰの符号が付いている。校正の見落としではないだろうか。実際歌ってみると、1/4拍間ではネーヰはできない。」いう師の説に対しては私は異論を唱えたい。
 ネーヰについて楽典では「声を前に稍下方に突出する姿勢で稍下気味の音を持続するのである。その後では多く次第下げがくるが場合によってはネーヰの下部で音高を降ろすこともある。」と定義している。ネーヰは私の調べた範囲では、かぎゃで風節型、干瀬節型に見られる発声法である。多くは四ー老%老…合、工ー尺%尺…上の形で次第下げに似た発声法であるが、ネーヰの下部で音高を降ろす事もあるということから工ー尺%尺上の歌い方である。ただ、尺%尺上を1/4拍のスペースに表記できないため尺%上の表現になっているのではないか。発声は尺%尺のところで稍前方に突出する姿勢で発声すれば良いのであるが、大事なことはネーヰと次第下げの区別をはっきりさせるべき発声法であるということである。


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